研究内容

1. 免疫細胞の分化と応答におけるクロマチン高次構造の機能

ヒトの細胞1個に含まれるDNAを繋ぎ合わせると約2mもの長さになります。この極めて長い分子は5から10μmほどの小さな核内に収納され、様々な大きさ・形状をもつクロマチン高次構造を形成しています。しかし、これらクロマチン高次構造の形成の仕組みやその機能については不明な点が多く残されています。

私たちの体には様々な種類の免疫細胞がいます。細かい分類も含めれば20種類以上の血球・免疫細胞が存在することがわかっています。これらの細胞はそれぞれ独自の機能を発揮して、病原体などから私たちの体を守るなど重要な役割を担っています。私たちは多様な免疫細胞が生体内でどのように分化・産生されるのかについて研究しています。

最近の次世代シーケンス技術の発展により、Hi-C 法(染色体立体配座捕捉法)などによって細胞核内のクロマチン高次構造を全ゲノム規模で解析できるようになりました。私たちはマウス生体に由来する免疫細胞と骨髄前駆細胞(免疫細胞のもとになる細胞)を用い、Hi-C 法でクロマチン高次構造の変化を網羅的に解析しました。その結果、免疫細胞の分化にともなって様々なレベルのクロマチン高次構造が大きく変化することがわかりました(Kurotaki et al. PNAS 2022)。現在、私たちは免疫細胞分化の過程で形成されるクロマチン高次構造が免疫細胞の分化や免疫応答にどのように関与するのかについて解析を進めています。最終的にはクロマチン高次構造の形成を制御できるような薬剤を開発し、炎症性疾患やがんなど免疫が関与する疾患の新たな治療法開発につなげていきます。

2. 炎症時の免疫細胞の分化における転写制御機構の解明

私たちの体内には20種類以上の造血・免疫細胞が存在し、免疫応答・酸素運搬・止血など生命維持に必須の役割を担っています。中でも樹状細胞やマクロファージを含む貪食細胞は、サイトカイン産生や抗原提示を通じて獲得免疫を誘導する重要な免疫細胞群です。これら多様な免疫細胞は、遺伝子発現パターンの違いによって生み出されます。この細胞種特異的な遺伝子発現パターン制御には、転写因子の働きが重要な役割を果たしています。これまでに、定常状態における免疫細胞の転写制御機構は明らかになってきましたが、感染や炎症時に免疫細胞がどのように分化・活性化されるのかについては、未だ不明な点が多く残されています。本研究室では、炎症環境下における免疫細胞分化を制御する分子機構の解明を目指しています。